※『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』の重要なネタバレを含みます。
『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が、とんでもない勢いで売れている。
7月24日の公開から24日間で、観客動員645万人。興行収入92.8億円。
100億円が見えてきた。
「ちいかわ人気、すごいな」
最初は僕も、そう思った。
かわいいキャラクター。限定グッズ。入場者特典。コンビニとのコラボ。
そりゃ強い。
でも、この映画について調べているうちに、別のことが気になってきた。
……これ、本当に「かわいい映画」なんやろか。
入口は、めちゃくちゃかわいい
引用画像:一見すると、夏の島を舞台にしたにぎやかでかわいい冒険映画。でも、この島には別の顔がある。画像:『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』公式X(@chiikawa_movie)
映画の始まりは、「特別な島へのご招待」。
限定島ラーメン。限定スイーツ。カンタンな討伐で100倍の報酬。
ちいかわたちは、その魅力的な言葉に釣られて島へ向かう。
夏。海。島。ごちそう。ちいかわ、ハチワレ、うさぎ。
ここだけ見ると、めちゃくちゃ入りやすい。
ところが、島に着いてから空気が変わる。
巨大なセイレーン。連れ去られる島民。討伐。人魚。復讐。
そして、人魚を「食べた」ことから始まった悲劇。
かわいいキャラクター映画のはずなのに、だいぶ怖い。
かわいい世界なのに、「食べる」が怖い
この映画では、やたらと食べ物が出てくる。
島ラーメン。カレー。貝汁。島民からのごちそう。
セイレーンも、島の料理を気に入る。
そして物語の重要なところでは、人魚を食べる。
食べることは、楽しい。生きるために必要。誰かと仲良くなるきっかけにもなる。
でも、この映画では同時に、欲望や、命や、復讐にもつながっていく。
「食べる」が、一つの意味で終わらない。
そこが、ちいかわらしい。
かわいい顔をしているのに、奥へ行くと、「これ、誰が悪いんやろ?」と簡単に答えられなくなる。
そして面白いのは、これだけ大衆的なキャラクターになっても、こういう不穏さを消していないことだ。
引用画像:映画のキービジュアルは、かわいさ全開ではなく、青い洞窟と月に包まれた幻想的で少し不穏な一枚。パンフレットの表紙にも使われている。作品は、その“変なところ”を入口から隠していない。画像:ナガノ公式X(@ngnchiikawa)
むしろ、その「変なところ」まで含めて、ちいかわなんやと思う。
普通なら、「クセ」を消したくならない?
ここで、ふと思った。
これだけ大きな作品になったら、もっと分かりやすく、もっと安全に、もっと誰でも楽しめるものにしてもよさそうだ。
怖いところを減らす。不条理なところを減らす。人魚を食べるなんて話も避ける。
つまり、「かわいい」だけに寄せる。
その方が売りやすそうに見える。
でも、『映画ちいかわ』はそうしなかった。
入口は、ものすごく広い。
でも、中に入ったあとの「変なところ」は、ちゃんと残っている。
ここが僕には一番面白かった。
「入口を広げる」と「中身を薄くする」は違う
映画の外を見ると、さらに分かりやすい。
セブン‐イレブンでは映画に合わせて、「限定島ラーメン」「島二郎のスパイスの効いたカツカレー」「島二郎の貝汁」など、作中の食をイメージした商品が展開された。
引用画像:作中の「限定島ラーメン」が、現実のコンビニ商品になる。物語の中の“食”が、映画館の外の日常へ出てくる。画像:セブン‐イレブン公式サイト
入場者特典も変わっていく。
映画。特典。食べ物。グッズ。SNS。
いろんなところから作品へ入れる。
面白いのは、入口を増やしたからといって、物語そのものを万人受けする形に薄めているわけじゃないことだ。
もちろん、92.8億円という数字の理由を、これ一つで説明するつもりはない。
でも、書く側の僕には、ここが妙に引っかかった。
入口は広くする。
でも、中身まで丸くしなくていい。
これ、Substackでも同じなんじゃないか
ここまで考えて、自分の記事のことを思い出した。
Substackで記事を書いていると、やっぱり読まれたい。
タイトルを考える。アイキャッチを作る。冒頭を直す。Notesで告知する。
どうすれば開いてもらえるか考える。
でも、読まれたいと思えば思うほど、時々、「この話、変すぎるかな」と思うことがある。
分かりやすくしよう。無難にしよう。役に立つ話にしよう。余計なところは削ろう。
そうやって整えているうちに、一番自分らしかった部分まで消してしまう。
僕も、やりがちだ。
でも、『映画ちいかわ』の作りを見ていると、そこは分けて考えた方がいいのかもしれないと思う。
読んでもらう工夫と、中身を万人受けさせることは違う。
タイトルは入口。アイキャッチも入口。Notesも入口。
公開したあとだって、一節だけ切り出したり、別の角度からもう一度紹介したりしていい。
入口は、何個作ってもいい。
でも、そのために記事の中身まで、「みんなが好きそうな自分」に直す必要はない。
読まれたいからって、「変なところ」を消さなくていい
ちいかわは、かわいい。
だから近づきやすい。
でも近づいてみると、シュールで、不条理で、時々ホラーで、「なんやこれ」と引っかかる。
たぶん、その「なんやこれ」が残る。
発信も同じなのかもしれない。
分かりやすいタイトルをつける。読みやすくする。入口をたくさん作る。
そこは工夫する。
でも、自分の中にある「ちょっと変なところ」まで削らない。
入口を広くすることと、中身を薄くすることは、同じじゃない。
『映画ちいかわ』について調べていると、そこを勘違いしたらあかんなと思う。
読んでもらう工夫はする。
でも、自分の「変なところ」は残しておく。
もしかすると、その部分こそが、読み終わったあとに誰かの中に残るものなのかもしれない。
「なんやこの記事。笑」
くらいで、ちょうどいいのかもしれない。
あなたが「読まれるために」と、削りそうになった“変なところ”はありますか?





ちいかわは、内容が奥深いですよね!映画はまだ見ていないので、男1人チャレンジしてみようかな?笑